経済データの基礎知識【景気 基礎2】
1.名目と実質
○実質
・名目値から価格の変化による影響を取り除いたもの
・実質値=名目値/物価指数
・名目値=実質値×物価指数
名目値(金額)の変化は、実質(数量)と物価に分けて考えられる
・名目(金額)で表される経済データ;企業の売上高、百貨店販売、賃金など
実質(数量)で表される経済データ;鉱工業生産、実質GDP
2.前月比
○前月比
・前月比は前年比に先行して動く
前月比は景気の変化をいち早く把握することができる
一方で、月々の振れが非常に大きいため、注意が必要
(季節や連休の有無、月の日数の多さなどに左右される)
・季節調整値;統計的な処理により季節変動要因を取り除いたもの
・データの改善・悪化を見たい場合は季節調整値も見るとよい
3.指数
○指数
・指数;基準となる時点を100として現在の水準を表すもの
・データの比較が簡単であり、異なる単位で計測したものを集計しやすい
・指数に複数の品目が含まれる場合、重要度によってウェイトを設定する
4.寄与度
○寄与度
・寄与度;全体の変化率に対して、各内訳の変化がどの程度影響を
与えているかを示すもの
・寄与度=内訳項目の伸び率×前期における内訳項目の全体に占める割合【簡便法】
指数の場合は 寄与度=内訳項目の伸び率×内訳項目のウェイト
・個別の品目や業種の動きをいる際は寄与度の観点も考慮するべき。
#ウェイトが大きいのであれば小さな動きも経済に影響大
#ウェイトが小さいものであれば、多少の変動ならば経済に影響小
#変動が激しいものは、ウェイトが小さい場合も経済に影響大のおそれ
参考図書:『予測の達人が教える 経済指標の読み方』(新家義貴,日本経済新聞出版)
景気循環をもたらすもの【景気 基礎1】
1.景気の方向性と水準
○景気の「方向性」と「水準」は区別すべし
・景気の方向性→「景気回復局面(上向き)」と「景気後退局面(下向き)」
・景気の水準→「好況(一定水準より上)」と「不況(一定水準より下)」
・「方向性」と「水準」は必ずしも一致しない
・一般的には、「方向性」が先行する(先行きを示すのも方向性)
2.経済の動きには長期と短期がある
○「短期」
・短期の経済変動は、需要面より分析
・個人消費や設備投資、輸出の動きにより分析
○「長期」
・長期の経済変動は供給面より分析
・労働力、資本ストック、生産性により分析
・「潜在成長率」;中長期的に持続可能な成長率
・国ごとの生活水準などにも関わる。長期的に生活水準を引き上げるには、
需要の引き上げではなく、生産性を高めていくことが大事。
3.景気循環(短期)をもたらすもの
○外的ショック
・海外経済の動向や、為替レート、株価などの変動や、災害の発生により
好循環が終わることがしばしば。
○財政政策
・「財政政策」;政府が実行するもの
○金融政策
・「金融政策」;中央銀行が実行するもの
・金利の引き下げなどを行う
・基本的には金利の誘導を行う
→お金を借りやすくなり住宅投資・設備投資が増加
株価上昇や通貨安をもたらすこともある
・現在は金利が0に近いため政策金利を下げることが難しいため、
・金利低下が企業の投資増加につながるまでにはタイムラグがあるが、
株価や為替レートへの影響はすぐに表れる。
※ETF;上場投資信託(Exchange Traded Fund)
複数の銘柄で構成され、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)等の
指数に連動するように運用される投資信託の一種
○耐久消費財・設備投資の循環
・耐久消費財(自動車や家電)の消費や、設備投資は景気回復の初期に
多くなる傾向。(→景気を刺激する)
・一定水準になると需要は頭うちをする。
・景気悪化時は設投資を減らすが、やがて需要に対して不足するため、
設備投資を増やすことになり、景気を刺激する。
○在庫循環
・一般的には、企業は需要の増加分(減少分)を上回るペースで、
生産を増加(減少)させるが、一定水準をこえると、反対に転じるため、
循環が生まれる。
参考図書:『予測の達人が教える 経済指標の読み方』(新家義貴,日本経済新聞出版)